煎り止め書店
店長:一ハゼ、毎回聞き逃す
飲んだ一杯の話は、客がしてくれます。この店で読むのは、その手前。生豆を選び、鍋を振り、ハゼの音で煎り止めを決め、挽いて湯を落とす。焼いた側の手元だけを並べました。うまく入った朝より、焦がして捨てた豆の話のほうが長く残ります。
この一杯が港を渡ってきた順番が分かる
豆の値段で国の形が変わった記録
どこで火を止めるか、数字で詰める
煎り止めの一秒を、言葉にした人の手
ハゼの音だけを頼りにして火を見る
焼いてから落とすまでを一冊で繋ぐ
台所で豆を焼くと決めた人の手順
手で回す焙煎機に、腕が付き合う
湯を落とす速さで味がどう動くか
なぜ苦いのかを、豆の側から答える
一杯を出す前に整えておく店の空気
カウンターの内側から見た百年の記録
焼く腕だけで店を開ける人の算段
焼く前の豆に、誰がいくら受け取ったか
淹れ方にこだわる人の、面倒な日常
謎より先に、抽出の手つきを見てしまう
豆を売る店主の、客を見る目の細かさ