よそ者の手帳書店
店長:蚤の記述に付箋、九十枚
日本に住んでいる側には見えないものが、通りすがりの他人の手帳には書いてあります。幕末の宿、明治の子ども、便所、蚤の多さ。来て、驚いて、書き留めて帰った人の記録だけを並べる店。褒めた話より、失礼なことを書き残した一行のほうが長く残ります。
馬で奥州へ、宿の蚤まで書き留めた人
貝を拾いに来て、子どもの遊びまで記録した
松江に住みついたよそ者の、最初の驚き
通訳として立ち会った人の、手帳の生々しさ
外国人向けの道案内が、当時の日本を晒す
トロイア掘る前に、江戸の値段を書いている
黒船の内側で書かれた、こちらを測る手帳
植物を採りに来て、庭と人まで観察している
文章より先に、よそ者の目が描いた絵を見る
若い士官の手帳は、遠慮なく失礼を書き残す
開かない国の港で、待たされた側の記録
道中ずっと測っては、手帳に書き足していく
出島から出られない人が、日本を書き切った
宣教のための報告書が、暮らしを写している
違いを並べた箇条書きが、いちばん容赦ない
信長に会ったよそ者が、会話まで書いている
桂離宮で足を止めた、よそ者の最初の一言