拍手の手前書店
店長:リード、削りすぎた
上手くなる瞬間は舞台の上にはありません。誰も聞いていない部屋で同じ四小節を三十回、指の癖、耳の作り方、リードの削り方。本番の前に積まれた時間だけを並べる店。鳴った日の話より、鳴らなかった日の話をよく読みます。
舞台裏の廊下で指を動かしている時間
動かない指と毎朝向き合う音の話
本番までの十五分をひたすら数える
音が揃うまでの半年を丁寧に書いた
上手くなりたいと言えるまでの練習
散らかった部屋から音だけは澄んでいる
森の壊れた鍵盤から始まる長い反復
耳がどう作られたかを追いかけた記録
一日十時間鍵盤に触れた人たちの生活
指の癖が音を決めると気づく一冊
席順と楽器で人柄が割れる練習場の話
音が鳴る前に働いている人の手元
鳴らす人ではなく、揃える人の道具箱
十二分のために積んだ三年分の練習
本番の手前、控室で何が起きていたか
あの舞台の外側で続いていた稽古の時間
吹けない日からやり直す部の立て直し
弾けない指で練習室に通い続ける話